とあるエッセイ集中にみつけた古いものについての記述

『古いというただその事実が、その物に対して何かしら親しみを覚えさせる。

人間は『過去』から出てきて来るのであるから、自らその出処に対するあこがれを持つ。未来に対してもあこがれを持つが、まだ踏みも見ぬ天の橋立で、一種の危惧がある。過去には危惧はない。とにかく通って来たので、このあこがれには望みはないが親しみはある。親しみはやわらぎに外ならぬ。』

また

『懐古癖というが、これは癖というよりも人間自然の惰性である。これは誰にも、多少の差はあれ、あることは疑われぬ。『時』には不思議の性格がある。これがまたやわらぎの惰性を構成する一要因である。』

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あまり自分が使わない言葉、自らも持つ感覚について表されている別の表現は、同じものなのに違うものとして受け止め、別の捉え方が自分の枠を気持ちいいほど簡単に外してくれる感じを持つ。

1947年1月・2月『知と行』

「やわらぎ」P229-234『東洋的な見方』鈴木大拙著 上田閑照編 岩波文庫

2017.08.25 Updated |